「『結婚式教会』の誕生」

五十嵐太郎、春秋社、2007.
日本人に取って、結婚式教会は西洋の雰囲気を楽しむ装置--34
消費者はブランドのイメージに惹かれているだけで、デザインポリシーを理解しているわけではない--35
結婚式教会はキッチュの王道--134
西洋の教会建築史では、外光の取り入れはあっても室内から外の風景を見ることは想定されていない--155
結婚式教会は、まわり(屋外)への開き方が重要--155
非信者の結婚式において、キリスト教は意匠に過ぎない--218
結婚式教会とは、無宗教とされる風土の極致から誕生したオリジナルな宗教建築(?)なのだ--239
○結婚式教会という現象を読み解く意欲的な本。
○建築史でもあり、宗教社会誌?でもある。

「ハーバードからの贈り物」

デイジー・ウェイドマン、ランダムハウス講談社、2004.
部下の能力を引き出し、意欲・自身に結びつけることが根本的な意味でのキャリア開発(ティモシー・バトラー)--33
周囲の人間にプラスの影響を与えるようにチャンスを提供すること(トーマス・デロング)--38
リーダーシップとは野心を持つことではなく、他人にモチベーションを与え、チャンスを与えること(トーマス・デロング)--43
謝った決断を下すのを恐れて、大きなチャンスを見逃さないこと;世界に変化を起こす機会を逃さないこと(ジェフリー・レイポート)--56
「私人としての自分」と「職業人としての自分」を区別すること(リチャード・テッドロウ)--61
キャリアを追求するために、自分の考え方がどのように形成されたかを理解することが必須(トーマス・マックロウ)--78
目的の幅を狭めれば、失敗する確率も高くなる(デイヴィッド・ベル)--101
目標に対する柔軟性が足りないと、リスクが大きくなる(デイヴィッド・ベル)--101
○HBSの教授陣による金言集。

「発声のヒント」

中尾和人、音楽之友社、1974.
顎・ノド・胸は一体のもので、どれか一つに力が入ると全部が固くなる;一つが本当に力が抜けると全部が楽になる--24
促音は外国語にないので外国人は上手く出来ない;このときは胸を強く圧迫している--51
歌と一体になった、くつろいだ自然さが必要--55
作為があっては十分に意思を出し切れない、自分では表現しているつもりでも考えている半分も出すことは出来ない--55
柔らかい舌でないと正しい外国語の発音は出来ない--57
話し声と同じ声で歌えるのが一番理想的--70
ノドから声が出ているのではなく、もっと深いところから八出している--72
発声は、人まねではなく自分自身を完成すること--74
発声はシーソーゲーム;反対のことをやるとよい--75
いい発声になればなるほど、押さえつけないために外へ出る声が多くなり、自分には小さく聞こえる--81
音符を読み、頭の中で歌ってみて音楽を作り上げてから、音にしてみるべき--85
○多いにヒントになる本。

「議論のウソ」

小笠原喜康、講談社現代新書、2005.
現代では、反応の速さを競うのではなく、愚鈍なくらいに判断を躊躇してみることが必要--8
民主主義とは、多数決ではなく、皆が議論に参加すること--8
マスメディア情報を批判的に読む能力だけでなく、自身への自覚的反省の視点が必要--49
弱い人を守ろうとする善意が、かえって逆のことになることがある--135
論証の前に結論を思い込みで決めておくと、全ての事柄がその結論を支持しているように見えてくるもの--145
ウソをつかないよりも、ついているウソが分かる方がずっとよい--214
○議論の読み解き方について、4つの視点を提示。
○結局は、情報を受け取る側の問題であろう。踊らされないこと。

「『神』という謎」

上枝美典、世界思想社、2007(2).
「自由」は、宗教的概念と濃く深く結びついている--64
人間の素晴らしさが発揮するためには、神との距離が必要--79
宗教哲学の入門書。
●とはいいつつも、入門書でもあり、宗教の意味と存在論についてのみ。
○議論の進め方は分かりやすい。やや扱う範囲が狭いようにも感じるが。

「信じない人のための講義」

中村圭志、みすず書房、2007.
信仰とは人間のイメージ能力の一種にほかならない--9【そのとおり】
宗教的発想=物事を、人間社会からではなく、神様の側から見ていくこと--34【御意】
社会を構成しているルールには、第三者=神様の手が入っていると言って構わないような側面がある--43
礼拝と筋トレの違いは、絶対的ではなく程度の問題;目的が分かりにくいのが宗教儀礼、分かりやすいのがトレーニング--48
解釈を考えること自体がキリスト教の営み;意味を最終的に確定できた人はいない--63
合理主義と神学的観念論とは、むしろ近似性が高い--69
一神教において重要なのは、唯一神という抽象的形象ではなく、神が歴史に介入していく具体的な一本の系譜があるということ--92
世界三大宗教」という言い回しには、高度な知的教理をもつ宗教を大宗教と考えるインテリ型偏見が隠されている--100
理屈より実践、という釈迦の主張そのもの反哲学的で、宗教的といえる--103
「宗教」という日本語は、何か特殊なものへの帰属を表す言葉となっている--176
宗教とは、何か目に見えない神聖な存在に向かって加護や救済を願うこと--179
宗教への二重の視点;(1)民族的伝統を超えた横断的意味世界、(2)宗教世界の意味は伝統毎に異なる--185
宗教は近代ヨーロッパに生まれた(独立した存在となった)とも言える--187
宗教は、世俗論理を超越すると同時に、世俗ゲームこそが宗教を密かに支えている--191
救済、修行は功利的な行い--201
宗教は、当事者には垂直的に、傍観者には水平的に見える--204
内部の人間よりも外部の人間のほうが、あっち側の世界のイメージを膨らませる嫌いがあるので気をつけなければならない--207
○大変示唆に富む、宗教論。

「立ち直るための心理療法」

矢幡洋ちくま新書、2002.
人間には立ち直るための資源、抵抗力がある--65
精神病・うつ病は、始まりがはっきりしている;過去との断絶・飛躍がある--71
神経症は、言葉によって形成される部分が大きい;言葉によって解きほぐすことも可能--107
人間は、ある程度自分で主観的に編集した自分史を持つことにより、自分を理解し、アイデンティティを保てる--137
症状を消すのではなく、「こうしたい」という人生でのプラス方向を目標とすること--181-2
原因探しは、結局立ち直るためのアンテナを狭めることにつながる--187